第4話-安全のマージンは使い切らないで

ある事業所で、営業マンが強い雨の日に高速道路を走行中、前車に追突する事故が起きました。

管理者

「あの時間はかなり雨が降っていたな。いったい何キロで走行していたのかね?」

「それは、出し過ぎじゃないか?雨で速度規制はかかっていなかったのかい」

「確かに、ABSによって車がスピンするといった事態は防げるかもしれない。しかし、車のスピードが速くなればなるほど停止距離も延びるだろう。停止距離は、タイヤがロックしないからといって、雨の高速ではそんなに短くできるものではないよ」

「その通りだよ。雨が降って停止距離が長くなっているのに、スピードを落とさないでいればABSがついていても安全装備のマージンを使いきってしまっているから、追突することもあるんだよ。まさに、君の事故がその証拠ではないかな」

「違うんだな~。むしろ安全装備は余裕をもつということなんだ。前車が横転するなど緊急時に急ブレーキを踏むことになっても、ABSによってタイヤがロックしないことで、ハンドル操作がきちんとできるだろう。冷静に対処すれば、衝突せずに回避ができるかもしれない。そうした緊急時の安全性を高めるために装備があるんだよ」

「そのとおり。雨の日でもスピードを落とさないなど、安全装備のマージンをぎりぎりまで使いきってしまえば、結局、衝突は避けられない。装備によって得られた余裕を活かすのが上手なドライバーなんだよ」

運転手

「すいません。追突事故を起こしてしまいました。前のクルマが急に速度を落としたものですから……。追突せずにすむと思ったのですが、止まるまで時間がかかって、アーッと思っていたら追突していたんです」

「そうですね。雨といっても前はよく見えていましたから、普段と変わらないスピードです。時速90キロを超えるぐらいですね」

「いえ。気づきませんでした。でも、ウチの車はアンチロックブレーキシステム(ABS)がついているはずですよね。ABSの車ならスリップの危険はないし、そんなに減速する必要はないんじゃないですか?」

「そうするとABSがついていても、減速するべきだということですか?」

「それでは、あまり装備のメリットはないんじゃないですか」

「安全装備がついているからといって、無理をすると意味がなくなるんですね」

「はい。わかりました」


■今月の教訓

 車に安全装備が搭載されていると、つい装備の能力を過信してしまう人がいます。安全装備は万が一の場合のセーフティネットのようなものです。装備の持っている性能を限界まで全部使い切って運転していては、事故につながります。安全装備はあくまで運転をサポートするもので、安全を保証するものではないのです。

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