こんにちは、野村です。
今回は、随分前に友人から聞いた失敗談です。
彼の郷里の秋祭りでは、だんじりを曳航しています。ある年、彼にだんじりの前に乗る大役が回ってきました。
交通規制がかけられた道路をだんじりは疾走します。空は澄み、頬を撫でる風は心地よく、沿道はひとで一杯。彼は得意満面、気分は最高でした。そして、だんじりは最大の見せ場のやりまわしの交差点へさしかかりました。
ただ、少しスピードが出過ぎていました。彼は、隣のブレーキ係へ声を掛けました。ブレーキは丸太を押さえ車輪へ力を加えてスピードを落とすのだそうです。ところがブレーキが効かないのです。ブレーキ係の腕にグーッという手ごたえがありません。スカスカ、グニャグニャするだけでスピードが落ちません。
スピードが出過ぎたまま交差点を曲がっただんじりは、何とか間一髪壁をすり抜けたそうです。彼の心臓はドキドキといつまでも打ち続けていました。
どうしてブレーキが効かなかったと思いますか?実は、ブレーキの下に彼の足が入っていたのです。ブレーキが車輪でなく、彼の足を押していたのです。それでスカスカ、グニャグニャしていたのです。
彼は、足袋が破れ、足の打撲と捻挫をしました。しかし、ブレーキの下に足が入っていたとは誰にも言えなかったそうです。そりゃそうですよね。
最近は、祭りの安全対策が非常に厳しいですからこんなことはないかと思います。それはともかく、どんな乗り物でも一番大事な装置はブレーキです。
今でも彼は、あのときは口から心臓が飛び出しそうだった、ブレーキは大事だと言っています。
(野村幸一)