ある事業所で、スピード違反を犯した運転者に、管理者がどのような状況であったか聞いています。
管理者 「君は、たしか2年前にもスピード違反で捕まってたよな。うちの会社ではスピードを出さないようにいつも注意をしているのに」
運転者「分かっているんですけど。あのときは、仕方がなかったんです!プンプン!」
管理者 「仕方がないって、どうして?」
運転者「得意先の担当者から、すぐに来てくれと言われたんで、急いでいたんです!」
管理者 「それで、スピード違反を?」
運転者「そうです。少しでも早く行こうと飛ばしていたんです!」
管理者 「おいおい、いくら早く来てくれと言っても、相手はスピード違反までして来てくれと言っているわけではないだろ」
運転者「それはそうですけど、でも一刻でも早く行かないとまずいじゃないですか!」
管理者 「君の話を聞いていると、どうも君は『だから心理』に陥りやすいタイプの人間だな」
運転者「『だから心理』って何ですか?」
管理者 「以前、高速道路でスピード違反をしたときも、確か『高速道路だから、早く走らなきゃ』という心理が働いたと言ってたよな」
運転者「確か、そういうことを言っていたと思います。それが何か問題でもあるのですか?」
管理者 「この心理が問題なんだ。『高速道路だから』少々スピードを出しても許されると自己暗示にかける心理なんだよ。これを『だから心理』と言っている」
運転者「そうなんですか。初めて聞きましたけど…」
管理者 「相手が早く来てくれと言っているからとか、高速道路を走行しているからといったケースの他にも、『だから心理』に陥りやすい状況はたくさんあるよ」
運転者「どういうときですか?」
管理者 「たとえば、スポーツカーや排気量の大きい車に乗っている場合だよ。『性能のよい車に乗っているのだから』チンタラ走っていてはカッコ悪いと、スピードを出す人もいるよな」
運転者「そうですね。そういう心理は何となくわかりますね」
管理者 「この他にも、子どもが急病で病院に連れて行くときなどでも『急病だから』スピード違反をしても仕方がないと、自分の行動を正当化するときもあるよな」
運転者「はあ……」
管理者 「今回の場合も『得意先からすぐに来てくれと言われて急いでいるのだから』などと自己暗示にかけて、スピードを出したのではないかな?」
運転者「はい」
管理者 「君だけじゃないよ。誰にでもこうした『だから心理』は潜んでいると思うよ。しかし、それを正当化するかしないかは、その人の心がけ次第だと思うよ」
運転者「ええ」
管理者 「自分の行動をいくら正当化しても、違反は違反なんだから。先を急いでいたりすると、どうしても『だから心理』に陥りやすいので注意してくれよ」
運転者「はい、わかりました」
スピードを出しそうになったとき、「‥‥だから」と理由をつけて自分の運転行動を正当化していないか考えてみてください。少しでもそのような理由があれば、すぐに運転態度を改めてください。