ある事業所の安全運転講習会で、講師の管理者が「雨の日でもヘッドライトを点灯するように」と話したところ、受講している運転者が次のような質問をしてきました。
運転者「雨の日でも昼間なら周りもよく見えますし、ヘッドライトを点灯しても意味がないように思いますけど」
管理者 「確かに君が言うように、雨の日でも昼間なら明るいし、ヘッドライトを点灯するのは無駄な行為のように思えるよな」
運転者「そうでしょう」
管理者 「でも、私が言っているのは自分が前方の路面を見るためにヘッドライトを点灯しなさいと言っているのではないんだ」
運転者「では、何のために点灯するのですか……」
管理者 「それは、自分の存在を相手に気づいてもらうためなんだよ」
運転者「えっ、どういうことですか?」
管理者 「昼間でも雨の日はどうしても暗くなるよな。そんなとき、雨に濡れた路面に車が溶け込んで見づらくなることがないか」
運転者「ありますね」
管理者 「見づらいということは、車の存在に気づくのが遅れたり、最悪の場合には見落とすこともあるということだよ」
運転者「はあ、あまり考えていなかったですね」
管理者 「たとえば、右に車線変更するときの状況で考えてみよう」
運転者「はい」
管理者 「右のサイドミラーを見て何も写ってなかったので、車線変更しようとしたら、後続車が来ていたということがよくあるよな」
運転者「私も経験がありますが、雨の日のサイドミラーは雨滴などがついて見えにくいですからね」
管理者 「そのとき、後続車がヘッドライトをつけていたらどう見えるだろうか。雨滴がついたミラーにもライトが光り、後続車の存在に気づきやすくなるよな」
運転者「そうですね」
管理者 「今度は君が後続車を運転しているとして考えてみようか。ヘッドライトを点灯せずに走行していて前の車が急に車線変更してきたら、君はどのように感じる?」
運転者「そりゃ、これだけ近づいているのになんで車線変更してくるの、と思いますよね」
管理者 「そうだろう。でもそれは見落とされているかもしれないよな。では君がヘッドライトを点灯して走行していたら、前の車はどうすると思う?」
運転者「たぶん、すぐ目の前に車線変更して来ないと思いますね」
管理者 「ヘッドライトを点灯して自分を目立たせるといったのは、そういうことなんだよ」
運転者「自分を目立たせて事故にあわないようにするということですね」
管理者 「そう。前車が微妙なタイミングで車線変更して来なければ、それだけ危険が少なくなるということだろ」
運転者「ええ」
管理者 「これからは、少しでも自分を他車に見せるという意識を持って運転してくれよ。そうすれば、それが安全運転につながり事故にあう確率も低くなるから」
運転者「はい、わかりました」