ある事業所で、帰社途中にスピード違反をした運転者が、管理者に報告をしています。
運転者「すいません。昨日営業から会社に帰ってくる途中にスピード違反をしてしまいました」
管理者「営業も終わって会社に帰ってくる途中に、なんでスピードを出す必要があるの?わからないなあ」
運転者「無意識のうちにというか……」
管理者「無意識といっても、その裏にはいろいろな『急ぎの心理』が隠れていると思うよ」
運転者「はあ……」
管理者「たとえば、営業先との約束の時間に間に合わなくて、スピードを出して違反をするというのが一般的な運転者が陥りやすい『急ぎの心理』だが、今回の場合は会社に帰る途中だろ」
運転者「そうです」
管理者「この他には終業前に起こりやすい『急ぎの心理』もあるんだが、今回の場合はこちらのケースかもしれないな?」
運転者「どういうものですか?」
管理者「たとえば、今日中にこの配達だけは済ませておこうとか、仕事の切りをつけておこうと急ぐ場合があるんだが、君は営業は終わっていたんだよな」
運転者「はい」
管理者「では、何か急いで会社に帰って、会社でしなければならない仕事でもあったの?」
運転者「いいえ、とくに急いでしなければならない仕事はなかったです」
管理者「じゃあ、何で早く会社に帰りたかったの?」
運転者「……」
管理者「会社からどこかに行きたかったの?」
運転者「はい」
管理者「やはり、そうだったんだな。何か約束があって6時には会社を出たいから5時半までに帰社して……と考えて余裕をなくしてしまったんだな」
運転者「そうです…」
管理者「差し支えなければ、どんな事情があったのか、聞かせてくれないかな」
運転者「ええ、今日は子どもの誕生日でケーキを買って帰ろうと思っていたんです」
管理者「それは子どもも喜ぶよ。でも、そんなに急いで会社を出なくてもケーキは買えるだろう」
運転者「後で考えるとそうなんです。でも、何となく早く行かなきゃ売り切れるんじゃないかと勝手に思い慌ててしまいました!」
管理者「……」
運転者「……」
管理者「『急ぎの心理』のなかには、焦る必要もないのに自らが原因を作っていることもあるんだよ」
運転者「はい」
管理者「常に『急ぎの心理』に陥って慌ててないか、焦ってないかを考えて安全運転をしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
『急ぎの心理』のなかには自分自身が作り出すものも少なくありません。「少しぐらい遅れても、事故を起こすよりましだ」と考え直して、常に落ち着いた行動を取れるように心がけてください。