ある事業所で、社員が山間部を走行中に飛び出してきた動物を避けようとして対向車線にはみ出して、ガードレールに接触する事故を起こしました。帰社してきた社員から管理者が状況を聞いています。
管理者「対向車線のガードレールに接触したということだけど、スピードを出していたの？」
運転者「いいえ、スピードはあまり出していませんでした」
管理者「では、何で対向車線にはみ出したの？」
運転者「左側の山からイタチのような小動物が飛び出してきたんです」
管理者「それで、とっさにハンドルを右に切ったというわけか」
運転者「そうなんです」
管理者「君は、日頃の運転でも何か危険に遭遇したときに、ハンドルを切っているの」
運転者「うーん、そうですね」
管理者「ブレーキは踏まないの？」
運転者「自慢ではないですが反応時間には自信がありますし、ハンドルで避けられますからね」
管理者「相当自信があるようだが、たとえハンドルで危険を避けられたとしても、今回のようにコントロールを失うこともあるよな」
運転者「あの場所から飛び出してきたら、誰でも避けられませんよ」
管理者「いや、事故が避けられるか避けられないかという話をしているのではないんだ」
運転者「どういうことですか？」
管理者「ハンドルで避けようとすると、大きなリスクが伴うということが言いたいのだよ。一つは今回のように避けられても二次的な事故を起こすことだ」
運転者「はい」
管理者「もう一つは避けられなかったときのリスクだ。避けられなかったらどうなると思う？」
運転者「うーん、当たりますね」
管理者「今回は動物だったが、相手が人だったらスピードを出したまま衝突すると、相手は相当な被害を受けるよな」
運転者「そうですね」
管理者「そうした事態を避けるには、どうしたらよいと思う？」
運転者「スピードを落とすことですか？」
管理者「そう、ブレーキを踏んでスピードを落としていれば、たとえ衝突したときでも相手が受ける被害を少なくすることができる」
運転者「ええ」
管理者「たとえば、スピードが出ていなければ重傷事故になるところが軽傷事故で済むこともあるよ」
運転者「そうですね」
管理者「これからは、危険に出会ったときはハンドルで避けるのではなく、まずブレーキを踏んでスピードを落とすことを最優先にしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
