ある事業所の社員が、得意先回りの途中で事故を起こし、管理者に事故の状況を報告しています。
管理者「赤信号を無視して横断してきた自転車と衝突したんだって？」
運転者「そうなんです。こちらの信号が青信号だったので、まさか横断してくるとは思いませんでした」
管理者「でも、道路端に自転車がいるのはわかっていたんだろう」
運転者「もちろん、わかっていましたよ」
管理者「だったら自転車が赤信号で渡って来たときに、とっさにブレーキを踏んだら避けられたのではないか？」
運転者「うーん……」
管理者「自転車の動向に注意していなかったのか」
運転者「それに、少しスピードが出ていたんで……」
管理者「ちょっと待ってくれよ。交差点を通過するとき、君はいつもスピードを出しているのか？」
運転者「青信号のときは、そうですね」
管理者「まったく無警戒で交差点を通過しているようだな」
運転者「それじゃ、私が悪いように聞こえますけど、赤信号で渡って来たのは相手ですよ」
管理者「君は、そう思っているかもしれないが、交差点では青信号でも注意義務があることを知らないのか」
運転者「青信号でも、ですか？」
管理者「道交法には『交差点を通過するときには、他の車両や歩行者に注意して、出来る限り安全なスピードと方法で進行しなければならない』とあるからね」
運転者「そうなんですね」
管理者「君は『クリーンハンズの原則』という言葉を聞いたことがあるかな？」
運転者「いいえ、クリーンハンズって、きれいな手という意味ですか？」
管理者「そうだな、『法律の保護を求めて裁判所に訴えるものは、きれいな手で訴えなければならない』ということだ」
運転者「私の場合は、『きれいな手』ではないので、法律で保護されないというわけですか」
管理者「そういうことなんだが、今回の事故の場合は過失相殺されることになる」
運転者「私にも過失があるわけですか？」
管理者「そう、いくら交差点の信号が青だからと言っても、安全運転義務違反の過失があるからね」
運転者「どれくらいの過失があるんですか？」
管理者「基本は25％くらいだが、君の場合はスピード違反も加味されるから35％位の過失があるかもしれないね」
運転者「青信号だったのに、そんなに過失があるんですか？」
管理者「そうだよ。これからは違反運転をしている人は法律で保護されない、ということをしっかりと肝に銘じて安全運転に徹してくれよ」
運転者「はい、わかりました」
