ある事業所で、社員が得意先から帰社する途中、高齢者と接触する事故を起こしました。帰社後に管理者に事故の状況を報告しています。
運転者「すみません。高齢者と接触してしまいました。まさか出てくるとは思いませんでした」
管理者「どういう状況だったの?」
運転者「道路左端に高齢者がいたのは、わかっていたのですが、急に道路に出てきたんです」
管理者「事故が起きた時間から考えると、周囲は暗かったと思うけど、君はヘッドライトを点けていたの?」
運転者「いいえ」
管理者「点けてなかったの。ではスモールライトは?」
運転者「スモールライトも点けてなかったですね」
管理者「なぜ、点けなかったの?」
運転者「暗いといっても周囲はよく見えていましたし、運転にはまったく支障がないですよ」
管理者「そういう考え方が問題なんだ。JAF(日本自動車連盟)が行った調査を見ても、君のようなドライバーが多いんだよ」
運転者「どういう結果ですか?」
管理者「暗くならないとヘッドライトを点灯しない理由として『スモールランプやフォグランプで十分』『周囲が見えているので運転に差し支えない』の二つが約7割を占めていたんだよ」
運転者「私もそういう理由ですね」
管理者「君を含めてこうした考えをする人は、ヘッドライト点灯の役割を視界を確保することだけとしか考えていないんだ」
運転者「えっ、ヘッドライト点灯の役割って、それだけではないんですか?」
管理者「もちろん、それがいちばん重要な役割だが、もう一つ重要な役割は自分を相手に見せるということだ」
運転者「自分を相手に見せる、ですか?」
管理者「そう、相手に自分の存在を見てもらうんだよ」
運転者「相手に見せるですか……」
管理者「そう、君がヘッドライトを点灯していれば、相手が車が来ていることにより早く気づくことができるからね」
運転者「はあ…」
管理者「今回の事故でも、君がヘッドライトを点けていれば、君の車に気づいたと思うんだよ」
運転者「そうすれば、高齢者が出てくることがなかったかもしれないということですか」
管理者「そう、ヘッドライトの点灯は、自分の存在を相手に知らせる役割があることも忘れずに、少しでも暗くなったと感じたら早めにヘッドライトを点灯させてくれよ」
運転者「はい、わかりました」