ある事業所で、雨の中を走行していた営業マンが、前を走行していた自転車を追い抜こうとした際に、自転車と接触する事故を起こしました。帰社してから管理者に事故の報告をしています。
運転者「すみません。自転車と接触してしまいました」
管理者「自転車と事故を起こしたって、どういう状況だったんだ?」
運転者「前方を自転車が走行していたんですが、その自転車を追い抜こうとした際に、急に自転車がふらついて前に出てきたんです」
管理者「自転車はカッパを着ていたのか?」
運転者「いいえ、傘を差していました」
管理者「傘を差してたって、片手で運転をしていたんじゃないのか」
運転者「そうですよ。急にふらついてきてひどい話ですよ」
管理者「君はもらい事故みたいに言うけど、君が注意していれば防げたかもしれないよ」
運転者「どういうことですか?」
管理者「傘差し自転車を追い抜こうとしたとき、どれくらいの側方間隔をとっていたの?」
運転者「うーん、あまり取っていませんでした……」
管理者「なぜ、取らなかったんだい?」
運転者「対向車が来ていたので、あまり右に寄れなかったんです」
管理者「自転車がふらつくかもしれないと考えなかったのか?」
運転者「自転車は結構安定して走行していたんで、そのまま真っすぐ行くと思ってしまって……」
管理者「だから、あまり側方間隔を取らずに追い抜こうとしたんだな」
運転者「そうです」
管理者「ところで、自転車はなぜバランスを崩したんだ」
運転者「自転車の人が言っていたんですが、前にアスファルトが欠けている段差部分があって、その上に乗ってバランスを崩したらしいです」
管理者「両手でハンドルを持っていれば、大きくバランスを崩すことがないが、雨の日に傘を持って片手ハンドルをしていれば、路面も滑りやすいし、いつバランスを崩してもおかしくない」
運転者「ええ」
管理者「だから、雨の日に傘を持って片手で運転している自転車を追い抜こうとするときには、側方間隔を開けておく必要があるんだ」
運転者「はい、わかりました。でも、今回の事故のように対向車がいて側方間隔が取れないときがありますよね」
管理者「そういうときには、自転車と側方間隔が取れるまで待つことが大事なんだ」
運転者「待つんですか?」
管理者「そう、対向車が来ていて側方間隔が取れないなら、対向車がいなくなって、右に寄っても大丈夫なところまで自転車の動きに注意しながら追従することだ」
運転者「そうなんですね」
管理者「これからは、雨の日に自転車と側方間隔が取れないときには絶対に追い抜かないようにしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
雨の日に傘差し自転車を追い抜くときには、バランスを崩しやすいことを考えて十分な側方間隔をとる必要があります。それができない場合は、とれるようになるまで待つようにしてくださいね。