ある事業所で、社有車を運転していた社員が渋滞に巻き込まれて、前車に追突する事故を起こしました。帰社して管理者に事故の報告をしています。
管理者「追突事故を起こしたんだって?」
運転者「すみません。渋滞に巻き込まれてしまい、前の車が停止したのに気づくのが遅れて追突してしまいました」
管理者「渋滞に巻き込まれて前車に追突するということは、わき見運転をしていたのか」
運転者「いえ、わき見はしてません」
管理者「わき見をしてなかったら、何で前の車に追突するんだ。おかしいと思わないか?」
運転者「でも、前はちゃんと見ていたんです」
管理者「前を見てたのに、前車に追突するなんて理屈に合わないじゃないか」
運転者「そうなんですが……」
管理者「前車が止まったのは、確かに見ていたんだな?」
運転者「うーん、見ていたような気がするんですが、その辺りの記憶がはっきりしないんです」
管理者「記憶がはっきりしない?ということは、居眠りをしていたのか」
運転者「いえ、居眠りはしていません……」
管理者「そうか。何かわかってきたぞ。最近、十分な睡眠が取れていないんじゃないか」
運転者「そうですね。子どもが生まれたばっかりで、結構夜泣きをするんで、寝不足といえば寝不足ですね」
管理者「やっぱりそうなんだな。たぶん君は一瞬居眠りをしたんだと思うよ」
運転者「眠った記憶はないんですけど?」
管理者「事故を起こす前、目がショボショボしたり、焦点が合わないような感覚はなかったか?」
運転者「そういえば、そんな現象がありましたね」
管理者「ということは、やっぱり君はマイクロスリープ(瞬間的居眠り)に陥ったんだ」
運転者「どういうことですか?」
管理者「睡眠が不足すると、目が開いたまま一瞬の居眠りに陥ることがよくある。これを『マイクロスリープ』と呼んでいるんだ」
運転者「僕は一瞬寝ていたということですか」
管理者「そう。この現象のやっかいなところは、本人が居眠りをしたことを自覚していないことなんだ」
運転者「だから、前を見ているつもりだったのに、前車が停止したのに気づかなかったんですね……」
管理者「そういうことだ。マイクロスリープの本当の怖さは、ほんの短い時間とはいえ脳が眠っているため、交通の状況変化に対応できないことなんだ」
運転者「たしかにその通りですね」
管理者「これからは、運転中に目がショボショボするなどの症状があったら、マイクロスリープに陥る危険があるので、早めに休憩をしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」