ある事業所に、お宅の社員が運転する車に嫌がらせをされたという、抗議の電話がかかってきました。管理者が当日、その辺りを走行していた社員に事情を聞いています。
管理者「昨日、うちの社有車に嫌がらせをされたという抗議電話があったんだが、調べてみると君がその辺りを走行していたと思うんだが、心当たりはないか?」
運転者「すみません。ちょっと腹が立ってしまって、つい……」
管理者「腹が立ったって、どんなことで?」
運転者「○○線の片側1車線の道路を走行していたんですが、脇道から目の前に急に割り込んできて、ゆっくりと走っていたもんですから……」
管理者「それで腹が立ったのか?」
運転者「私の後ろには車は来ていなかったし、急ブレーキを踏まなければならないタイミングでしたし、先を急いでいたので段々と怒りがわいてきて……」
管理者「それで、君はどうしたんだ?」
運転者「もう少し早く走ってくれ、という意思を伝えようと、車間距離を詰めたり、少し車線の右に寄ったりしました」
管理者「どれくらい、続けた?」
運転者「そうですね。○○町の交差点を左折するまでです」
管理者「結構、長い間続けたんだな」
運転者「すみません」
管理者「運転していると、誰でも相手の行動に対して怒りが生じることがあると思うよ」
運転者「はい」
管理者「でもね、その感情をコントロールできないままに車間距離を詰めて運転したりしていると、事故につながりやすいし、あおり運転で摘発されることもある」
運転者「そうですね」
管理者「だから、運転中はいかに感情をコントロールするが重要なんだ」
運転者「感情コントロールですか……」
管理者「そう、車内で大声を出す、深呼吸するなど、色々な方法があるが、最近注目されているのが6秒ガマンのルールなんだ」
運転者「6秒ガマン……」
管理者「大脳生理学の研究から、理性は大脳前頭葉が制御しているが、理性が機能するには数秒間かかることがわかっているんだ」
運転者「前頭葉が機能するまでガマンできれば、感情がコントロールできるということですね」
管理者「そう、前頭葉が機能するまでの6秒ぐらいガマンをすると、怒り反応は収まり、冷静に対処することができるというわけだ」
運転者「そうなんですね」
管理者「大切なことは、マナーの悪い車の行動にカッとしても、反射的に報復をしようなんて考えないことだ」
運転者「そうですね」
管理者「これからは、運転中にカッとすることがあったら、まず6つ数えるようにしてくれよ。そうすれば、怒りの感情がスーッと収まると思うよ」
運転者「はい、わかりました」
他人の運転行動にカッとして、その怒りをそのままぶつけるような運転をしても、何一ついいことはありません。怒りの感情がわいたら、6つ数えて怒りを抑えるように習慣づけてくださいね。