ある事業所に、バイクを運転しているという人から、社員が運転する車に転倒させられたという、抗議の電話がかかってきました。管理者が、該当する地区を運転していた社員に心当たりがないかを聞いています。
管理者「昨日、うちの車にバイクを転倒させられたという抗議電話があったんだが、心当たりはないか?」
運転者「バイクですか。私が転倒させたというんですか?」
管理者「先方では、そう言ってるんだ。君が急にコンビニから出てきたと言っていたけど」
運転者「うーん、コンビニですか……。アッ、思い出しました。けど、バイクと接触なんかしていませんよ」
管理者「接触していない?」
運転者「確かに、コンビニから合流するときに、バイクが来ている前に入りましたけど、当たってはいませんよ」
管理者「そうか、だんだん分かってきたぞ。君は相手が急ブレーキを踏むようなタイミングで合流したんじゃないのか」
運転者「たしかにそうですね……」
管理者「そのとき、バイクは転倒したんだよ。気がつかなかったのか?」
運転者「うーん……」
管理者「気がついていたんだな」
運転者「すみません」
管理者「なぜ、そのまま逃げたんだ」
運転者「逃げたなんて……。少しスピードを緩めてバックミラーで様子を見たのですが、すぐに起き上がってきたものですから、大丈夫かなと思って」
管理者「大丈夫かどうかは、分からないじゃないか」
運転者「それはそうですが、バイクに当たってはいないし、私が事故を起こしたわけじゃないですから」
管理者「君は、相手と当たってないから事故の責任がないと思っているようだが、接触していなくても、事故の責任が問われることがあるんだよ」
運転者「エッ、接触していなくても、ですか……?」
管理者「そう、相手に当たってなくても、君の行動が原因で相手が転倒したら、君の責任が問われることもあり得るんだよ」
運転者「そうなんですね……」
管理者「今回の場合は、バイクの人は幸いケガをしていなかったが、もしケガをしていて君が救助をせずに立ち去ったら、『ひき逃げ』の罪に問われることがあるんだ」
運転者「『ひき逃げ』ですか?」
管理者「『ひき逃げ』になると、罰則も非常に厳しいものになり、違反点数も35点だから、それだけで運転免許取消しになるよ」
運転者「免許取消しですか……」
管理者「相手が転倒しても、接触していなければ自分は関係がないと思いがちだが、責任はあるんだよ」
運転者「そうですね」
管理者「これからは、接触していなくても相手が転倒したら、相手を救護するようにし、警察にも届けるようにしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
接触していなくても相手が転倒して負傷したにもかかわらず、救助せずに立ち去ったら「ひき逃げ」になることがあります。たとえ接触しなくても相手が転倒したら、すぐに救助をしてくださいね。