ある事業所の従業員が、得意先回りの途中で信号機のない交差点で中学生の自転車と出合い頭事故を起こしました。帰社してきた運転者が管理者に事故の様子を報告しています。
管理者「信号のない交差点で、自転車と出会い頭に衝突したって、一時停止標識はあったの?」
運転者「いや、なかったです。それで少しスピードを落として通過しようとしたんです」
管理者「それじゃあ、交差点の見通しはどうだった?」
運転者「見通しが悪いことはなかったと思います」
管理者「だったら、自転車が来ていることはわかっていたんだろう?」
運転者「それがよくわからなかったんです」
管理者「見通しが悪くない交差点だったんだろ。自転車が来ているのがわからないというのは、おかしくはないか?」
運転者「それはそうなんですが……」
管理者「言いにくそうだが、何かありそうだな」
運転者「左側の交差道路の見通しはよかったのですが、右側はフェンスがありまして、少し見にくかったですね」
管理者「そういうことだったのか、何となく今回の事故の原因がわかってきたぞ」
運転者「どういうことですか?」
管理者「君は、あの交差点を走行するのは初めてじゃないだろう?」
運転者「ええ、週に1~2回は通りますね」
管理者「そのとき、交差道路から自転車が来ることはあった?」
運転者「うーん、ほとんどなかったと思います」
管理者「そうだよな」
運転者「なぜ、わかるんですか?」
管理者「片方だけ見通しがよい交差点では、その方向の安全確認をしたら『何も来ていない』と思い込んで、無警戒に交差点に進入することがあるんだ」
運転者「なるほど……」
管理者「とくに通り慣れた道路では、いつも自転車などが来ないことがわかっているので、一方だけの安全確認で交差点に進入する傾向が強くなる」
運転者「確かに、その通りでした」
管理者「両側の道路が見にくい場合には、誰でも警戒して交差道路の左右の安全確認をきっちりとすると思うよ」
運転者「そうですね」
管理者「でも、片方だけ見通しがよい道路では、こうした落とし穴に陥りやすくなるので注意が必要だよ」
運転者「そういうことですね」
管理者「これからは、片方だけ見通しがよい交差点でも、両方の安全確認をしっかり行うようにしてくれよ」
運転者「はい、わかりました」