ある事業所の社員が、住宅街の道路をバックしていたときに安全運転義務違反を犯したと、不満げに管理者に違反の報告をしています。
管理者「バックしているときに安全運転義務違反って、どういうこと？」
運転者「私も訳が分からなくて、警察官に聞いたら歩行者の通行を妨げたみたいで……」
管理者「そういうことか、ところで、何ｍくらいバックしたんだ？」
運転者「50～60ｍくらいですかね」
管理者「そんなにバックしたのか。その間に歩行者が歩いていて危険な状態になったかもしれないな」
運転者「でも、バックしているときに歩行者などいなかったように思いますけど！」
管理者「バック走行の危険性は、そこにあると思うよ」
運転者「どういうことですか？」
管理者「車は、前に向けて走行することを前提に設計されており、後ろに向けて走行するようには作られていないということだ」
運転者「それは、そうですけど……」
管理者「前を見て運転している限り、視界も広いし、ハンドル操作やブレーキ、アクセル操作もスムーズにできるよな」
運転者「そうですね」
管理者「ところが、バックするときはどうだ？」
運転者「後ろを向いているので、後方の視界の半分くらいしか見えていないかもしれないですね」
管理者「バックの危険性は、そこにあるんだよ。君は、歩行者がいなかったように言っていたが、視界に入っていなかっただけだと思うよ」
運転者「そうかもしれないですね」
管理者「それと、後ろ向きだとハンドル操作もしにくいし、ブレーキやアクセルを踏む感覚がまったく違うからな」
運転者「確かに、なかなか真っすぐバックできませんね」
管理者「バックするということは、後方の安全確認も十分にできないうえに、車を正確にコントロールできない状態で運転しているということだ」
運転者「そういう意識はあまりなかったですね」
管理者「バックするときには、そういう意識を持つことが必要だよ。ところで、君はなぜバック走行をしたの？」
運転者「曲がる交差点を通り過ぎてしまって、交通量も多くなかったので、ついバックしてしまいました」
管理者「道を間違えたときなど、すぐにバックして元に戻ろうとする人がいるけど、安全のためにはバックは極力しないことが重要なんだ」
運転者「では、どうするんですか？」
管理者「遠回りになっても、前進して元に戻ることを考える。そのほうがはるかには安全だからな」
運転者「でも、遠回りしても元に戻れないこともありますよね」
管理者「そういうときは、周囲の車や歩行者、自転車に細心の注意をして、ゆっくりとバックすること、こういう運転を心がけてくれよ」
運転者「はい、わかりました」
